自分の「普通」を相手に押し付けないで。全ての人が持つ「多様性」とは?/マインドトーク(4)

年を重ねてゆく中で、誰にも相談できない悩みを抱えている方や、子供の気持ちがわからない...と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。SNSで注目を集める臨床心理士・みたらし加奈さんは、そんな人にぜひ「マインドトーク(自分との対話)をしてほしい」と言います。そんなみたらしさんの心理学エッセイ『マインドトーク あなたと私の心の話』(ハガツサブックス)より、「彼女が歩んできた人生の物語」を8日間連続でご紹介。きっと、あなたの悩みを軽くする助けにもなるはずです。

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マジョリティとマイノリティ

日本ではまだ「両親がいて、子が何人」という家族モデルが一般的で、世の中から受け入れられやすい現実がある。

老若男女が楽しめる「国民的アニメ」における家族構成のほとんどが「父親、母親、子ども」で、彼らは決して裕福でも貧乏でもなく、持ち家を持っている。

父親は正社員で、母親は主婦、子どもは楽しく学校に通っている。

ケンカはするけれど、亀裂が生まれるようなトラブルはなく、そこには浮気も家庭内暴力も存在しない。

子どもたちは当たり前のように「異性」に恋をしたりするし、性自認と体の性別は一致している。

しかし、現実はどうだろう?

2011年の厚生労働省のデータでは、いわゆる「ひとり親家庭」は約146万世帯と言われている。

2018年のデータでは持ち家がある人たちは61.4%。

2019年のデータでは、雇用者数5660万人に対し、2165万人が非正規雇用である。

これらのデータを見る限りでも、「大卒で結婚して子どもを産んでマイホームとマイカーを持って生涯離婚はしない......」という家族モデルは、決してマジョリティではない。

私はいつだって、「誰もがマジョリティでマイノリティである」という意識を大切にしている。

例えば恋人の有無を聞く時も「彼氏いる?」「彼女いる?」という言葉を選ばないし、子どもに向かって「お父さんとお母さんは?」なんて尋ねない。

目の前の夫婦に向かって「お子さんの予定は?」なんて声をかけることもない。

世の中には、親のことを憎む子もいれば、早くに親を亡くしてしまう子だっている。

親の顔を知らない人たちだっている。

子どもを持たない選択をしている人もいれば、苗字を変えたくないからと、事実婚をしている人たちもいる。

男の子だからって女の子を好きになるとは限らないし、これからもしかしたら「母、母、子」や「父、父、子」のような家族構成を持つ子だって多くなるかもしれない。

確かに、すべての可能性を配慮していたら、八方塞がりになってしまう。

しかし大切なのは「いつだって想像力を働かせて相手を見る」ということだ。

自分の「普通」を相手に押し付けないことだと思う。

臨床心理士として働く中でも、この想像力を求められることは非常に多い。

特に以前働いていた精神科では、本当にさまざまなバックグラウンドを持つ人たちがいた。

だからこそ「決めつけない」ことが必要とされたし、私もそれに気をつけながら言葉を選んだ。

SNSで発信したり、初対面の人と会う時にも、そのことを意識するようにしている。

「多様性」とひと言で言ってしまうと、なんだか「目に見えやすいマイノリティだけを配慮する」という意味合いとして受け取られやすい。

でも、何度だって言わせてほしい。

すべての人がマイノリティでマジョリティなのだ。

あなたはなんの「マイノリティ」だろう。

そしてあなたはなんの「マジョリティ」なんだろう。

少しだけ意識して考えてみてほしい。

あなたの中にも必ず「多くの人たちとは違う部分」があるはずで、また同じく「多くの人たちと同じ部分」があるはずなのだ。

だからこそ「なんでマイノリティに迎合しなければいけないの?」なんていう批判は、ある意味で的を得ていない。

だって多様性を重んじる社会というものは、必ずあなたにとっても生きやすい場所なのだから。

もしあなたが「多様性を意識しすぎて、言葉がかけられなくなってしまう」のであれば以下のことを留意してみてほしい。

私が気をつけている6カ条だ。

<1>

恋人の有無について聞きたい時は「パートナーいる?」

家族について聞きたい時は「ご家族について教えて」など、性別や役割を最初から特定しない。

<2>

国籍や人種、性別などによって「主語」を大きくしないこと。

ステレオタイプを押し付けないこと。

例えば「男って〇〇だよね」「女って〇〇だよね」や、「〇〇人ってこうだよね」などの会話をしないように心がける。

<3>

自分の「好きなこと」が、相手も「好き」とは限らない。

また「自分の嫌いなこと」が、相手も「嫌い」とは限らない。

人にはたくさんの「好き」「嫌い」があることを前提にする。

同じ属性や信念を持っている人が、価値観も同じとは限らない。

同性愛者だからといって皆が同性婚を支持しているわけではないし、フェミニストだからといってすべての女性の味方であるとは限らない。

<4>

裕福だからといって「悩みがない」わけではないし、金銭的に困っているからといって「不幸」とは限らない。

<5>

どんな背景があったとしても、他人の原体験を天秤にかけないこと。

例えば「私のほうが苦しいから、あの人が苦しいのは嘘だ」とか、相手の状況と自分の状況を比べてジャッジしない。

また「AさんよりもBさんのほうが苦しそう」というように、他者の状況を天秤にかけない。

すべての人の「感情」は、その人にしか体験できない背景があることを知る。

<6>

たとえ悪気がなかったとしても、相手に窮屈な思いをさせてしまった時は「ごめんなさい」と謝ること。

そして考え方を修正する必要があれば、「どこが嫌だったのか教えてくれる?」と尋ねてみる。

【次回のエピソード】家事が苦手な私が男性と付き合う中で感じた...「ぬぐいきれない違和感」

【まとめ読み】『マインドトーク』記事リスト

mindtalk_H1_obi_001.jpg5章にわたって、みたらし加奈さんが自身の体験記やお悩み相談への回答を通して、悩みを抱える人々へ「生きる選択肢を広げる」ヒントを教えてくれます。

 

みたらし加奈(みたらし かな)

1993年、東京都生まれ。臨床心理士。SNSを通して、精神疾患の認知を広める活動を行なっている。大学院卒業後は、総合病院の精神科にて勤務。現在は、フリーランスの活動をメインに行っている。女性のパートナーと共にYoutubeチャンネル「わがしChannel」も配信中。

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『マインドトーク あなたと私の心の話』

(みたらし加奈/ハガツサ ブックス)

誰にも相談できない悩みを抱え、精神的に疲れてしまった…そんなあなたは、生きる選択肢を広げるために「マインドトーク」をしてみませんか? 自分と対話し、もう一度「生きる」と向き合ってみることで心がフッと軽くなるかもしれません。SNSで注目を集める臨床心理士・みたらし加奈さんが、自身の体験を包み隠さず伝えることで、悩みを抱えるすべての人たちとの対話を試みる、話題の一冊です。

※この記事は『マインドトーク あなたと私の心の話』(みたらし加奈/ハガツサ ブックス)からの抜粋です。
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