「高校受験を3日後に控え、緊急手術をすることになった息子。親として、息子を励まさなければいけないのに、不安ばかりが募ります。しかし、手術を終えたばかりの息子の決心が奇跡をもたらし...」
■受験直前に手術を受けた息子。人生をかけた「ある決心」が奇跡をもたらす
ところが、しばらくして病室から私を呼ぶ息子の声は悲観したものではありませんでした。
担任と連絡を取ったそうで、病院の先生に事情を説明し、車椅子での受験は可能か確認して欲しいと言ってきたのです。
そして受験先の高校に連絡をしてこういう事例があればそのときの対処法はどうだったのか聞いて欲しい、と。
恥ずかしながらただ混乱して悲観していた私は、息子のその言葉ですぐさま行動を開始。
担任も駆けつけてくれて、受験先との話し合いでもやはり「明日の受験しかない」ことを確認しました。
しかし、医師は「虫垂を処置できるように穴が開いている状態なので、外出は許可できない」といいます。
息子は自分の夢、その学校しか受けていないこと、たくさんの人の協力をもらって明日を迎える万全の準備でやってきたことを医師と看護師に話しました。
その日の夜、医師が病室へ。
一時的におなかの傷を閉じる手術をする、それでも明日の朝の体調次第になるが、外出を許可できる確率は20%くらいだと思ってくれと言ってくれました。
息子はここでようやく涙を流し、「ありがとうございます!」と神様でも拝むように手を組みました。
希望の光が見えました。
翌日。
看護師が一人帯同してくださり、担任の押す車椅子で新幹線に乗り1時間。
タクシーで30分の受験会場につくと、高校の先生が二人出向かえてくれて受験教室まで車椅子を押してくれました。
3時間ほど外で待ち、受験会場から車椅子で押されて出てきた息子。
まっすぐ座っていられないほど消耗していたものの、ぐっと親指を立ててにっこりと笑い、私たち三人はまるで合格したかのように手を取り合って歓声を上げました。
1月の手術から、退院ができたのは3月の卒業式直前。
息子の通知表には3学期の欄に測定不能の大きな斜線がついていましたが、先生からの言葉には「どんな逆境にも負けないことを証明しました。人のつながりに感謝して成長を続けていくことを期待しています」と。
そんな息子も、今は社会人になりました。
あの怒涛の日々を支えてくれた医師、看護師、担任の先生に、毎年帰省をするたびにお土産を持って会いにいっています。
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